modernova Research Desk です。間接照明を足したのに思ったほど明るくならない、置いてみたら部屋がかえって狭く感じる、照明だけが浮いて眩しい。こうしたつまずきは、器具の良し悪しより「光が部屋のどの面にどう当たっているか」で決まります。リビングと寝室、書斎と洗面では、同じ器具を同じ高さに置いても結果がまるで変わります。
この記事は、部屋ごとの細かい設計に入る前の地図です。読者が検索するのは「反射率」や「輝度」といった専門語ではなく、暗い・狭い・眩しいという体感のはずです。そこで本記事は、その体感をまず物理の原因に翻訳し、どの部屋にも効く判断の軸を渡します。部屋を貫く考え方と部屋横断の比較に絞り、各部屋の具体的な寸法や器具選びは、それぞれの記事に譲ります。
- 「暗い・狭い・眩しい」という症状を、光の物理の原因に翻訳する見方
- 部屋を貫く三つのアプローチ(沈める・広げる・効かせる)
- 色温度・明るさ・照らす面という三つの物差しの使い方
- 部屋別の推奨色温度と明るさ、効く配置の早見比較
- 部屋を問わず起きる失敗と、その物理的な防ぎ方
「暗い・狭い・眩しい」を物理の言葉に翻訳する
間接照明の悩みは、たいてい三つの症状に集約されるものです。最初に、その症状が光のどんな現象から来ているのかを押さえておくと、後の判断がぶれません。症状はどれも体感の言葉ですが、その奥では光の量・面の明るさ・見える角度といった、測れる要素が動いています。

一つ目は「足したのに暗い」。これは多くの場合、光を受ける面の輝度が足りていないか、間接照明だけで必要な照度に届いていないかのどちらかです。照度の単位はルクス(lx)で、1ルクスとは1平方メートルあたり1ルーメンの光束が届いた状態。間接照明は壁や天井にいったん光を反射させてから部屋を照らすので、同じルーメンでも直接照らすより手元に届く量は減ります。しかも反射する面が濃い色だと、光の多くが吸収され、返ってくる明るさはさらに落ちてしまうのです。雰囲気を優先して間接照明だけにすると、計算上は足りているつもりでも体感が暗くなりやすい、というわけです。明るさの不足は、器具の数や置き場所より先に、どの面に光を当てているかを疑うのが近道になります。
二つ目は「狭く感じる・圧迫感がある」。原因は、天井や壁の上部が暗く沈み、視線が自然と下がってしまうことにあります。人は明るい面に視線を向ける性質があり、上方が暗いと空間の高さや奥行きを読み取りにくくなります。床や低い家具だけが明るい状態では、部屋の重心が下がって、実際の面積以上に狭く見えてしまうのです。裏を返せば、天井や壁の上のほうを明るく返してやるだけで、同じ広さでも開けた印象に変わります。
三つ目は「照明だけ浮いて見える・眩しい」。座る、寝転がる、階段を降りるといった姿勢の変化で光源そのものが視界に入ると、まぶしさ(グレア)になります。グレアの強さを決めるのは、光源の明るさと背景の暗さの差、そして光源が見える角度です。明るい部分と暗い部分の落差が大きすぎても、光った帯だけが背景から切り離されて浮いて見えてしまいます。演出として光らせたいはずの帯が、かえって部屋から浮き上がるわけです。どの症状の裏にも、必ずこうした光の振る舞いがあります。
この三つの症状は、裏返せばそのまま対策の方向になります。暗いなら受光面の輝度を上げる、狭いなら上部の面を明るくする、眩しいなら光源を隠して明暗差を整える。次の章では、この対策をもう少し体系立てて、部屋を貫く三つのアプローチとして整理します。
部屋を貫く三つのアプローチ
部屋別の間接照明でつまずく原因の多くは、明るさの「量」から考え始めることにあります。先に決めたいのは量ではなく、その部屋で光に何をさせるかです。住まいの部屋は、光の使い方で大きく三つのアプローチに分けられます。
明暗順応を使って「沈める」
くつろぎや睡眠を主目的にする部屋では、あえて暗さをつくることが質につながります。目には明暗順応という仕組みがあり、暗い環境にしばらくいると感度が上がって、わずかな光でも十分に見えるようになるのです。だからこそ部屋全体を一律に明るくするより、低い位置に弱い暖色を置いて照度差をつくり、空間の重心を下げたほうが落ち着きます。低い色温度の光は副交感神経を優位にしやすく、就寝前の低照度は眠りに関わるメラトニンの分泌を妨げにくいとされています。

明暗順応には少し時間が必要です。明るい場所から暗い部屋へ移ると、目が慣れて細部が見えるまでに数分を要するもの。そのため寝る前の部屋を均一に明るくせず、低照度に保っておくと、目を休ませる方向に働きます。寝室の全体照度は、JISの住宅用途でもかなり低い水準が目安とされ、着替えや読書のときだけ手元に別の光を足す組み立てが現実的です。暗さは質を下げる欠点ではなく、休息のための積極的な設計。そう捉えると、寝室づくりは考えやすくなります。
光の位置も効きます。横になったとき視界に強い光源が入ると、目が覚める方向に働くため、ベッド周りでは光の重心を低く保つのが基本です。ヘッドボードの裏や足元から壁や床をやわらかく照らし、天井の強い直接光は控える。布や和紙のように光を透かす素材を選べば、同じ明るさでも刺激が和らぎます。寝室をあえて暗めに設計する考え方は、寝室の明るさを落とす設計の記事で具体的に整理しています。
反射率と壁面輝度で「広げる」
光は空中を飛んでいる間、空間を明るくしません。何かの面に当たって反射し、その面が光って初めて、部屋は明るく広く見えます。ここで効くのが面の反射率です。明るい面は受けた光をよく返し、暗い面は吸収して沈める。光をむらなく拡散する面(完全拡散面)では、面の輝度はおおむね反射率に比例します。つまり同じ器具でも、白い天井に当てるのと濃い色の壁に当てるのとでは、返ってくる明るさがまるで違うわけです。面が光ってはじめて明るさが生まれる、という当たり前を押さえると、器具選びの優先順位は変わってきます。
反射率は、面の色と仕上げでおおまかに見当がつきます。白い天井や明るいクロスは受けた光の多くを返し、濃い色の壁や床はその一部しか返しません。広く見せたいなら、床より天井や壁の上部を明るくするほうが効率的。天井を照らせば視線が上がり、体感の広さが増します。天井全体を明るく返すコーブ照明が広く見せる定番なのも、最も面積の大きい天井を光らせて、部屋の明るさを底上げするからです。ワンルームのように限られた面積では、入口から最も遠い奥の角を明るくして視線を奥へ流すと、床面積以上の奥行きが生まれます。光をどの面にどう配るかの設計は、リビングの間接照明の配分の記事で詳しく扱っています。
視線誘導とグレア制御で「効かせる」
人の視線は明るい面へ向かうものです。この性質を逆手に取れば、見せたい面だけを照らして空間の印象を整えられるのです。鍵になるのは、光源そのものを視界から隠す納まり。発光部が見切れるとグレアになり、せっかくの演出が台無しになる。玄関や廊下、洗面のように、限られた面積で動線や手元をはっきり見せたい場所で、この方向が力を発揮します。
グレアを抑える勘どころは、光と影の境界(カットオフ)を先に決めることです。幕板のアゴをどれだけ立ち上げ、どの角度から光源が見えなくなるかを、設置前に詰めておきます。施工の段階で寸法がわずかに変わるだけでも、隠したはずの光源が見切れることがあるので注意が必要です。玄関では、全体は控えめでも、靴を脱ぐ足元はやや高めの照度に置くと安全に動けます。廊下や階段は、足元の間接光を人感センサーと組み合わせると、夜間でも主照明を点けずに移動できます。玄関まわりの明るさの置き方は、玄関の間接照明の記事で整理しました。
洗面台も、同じ考え方で読み解ける場所です。真上の一灯だけでは顔に濃い影が落ちるため、鏡の左右や鏡の裏から顔の両側へ光を回すと、影が和らいで身支度の細部まで見やすい配置です。鏡まわりの配光は、鏡まわりの間接照明の記事で詳しく扱っています。見せたい面に光を届け、光源そのものは視界から外す。それが、このアプローチの芯です。玄関も洗面も、面積は小さくても視線の通り道。ここを整えると、住まい全体の印象が引き締まります。
色温度・明るさ・照らす面という三つの物差し
アプローチを決めたら、次の三つの物差しで具体化します。色温度、明るさ、そして照らす面。この三つはどの部屋でも共通して効き、後ほどの早見表もこの軸で組み立てています。
色温度は部屋の主目的で選ぶ
色温度は光の色みを表す数値で、単位はケルビン(K)です。低いほど赤みの強い暖色、高いほど青みの強い寒色になります。一般的な整理として、電球色は約2700K、温白色は約3500K、昼白色は約5000K。低色温度は気持ちを落ち着かせ、高色温度は覚醒や集中を促す傾向があるとされます。くつろぎや睡眠が主目的の寝室・ダイニング・くつろぎ時のリビングは電球色寄り、手元の見やすさが要るキッチンや書斎、洗面は白めが扱いやすい組み合わせです。あわせて見ておきたいのが演色性で、光が物の色をどれだけ忠実に見せるかを示します。最高値は100、一般的な住宅照明は80程度が目安。料理の色を引き立てたいダイニングや、肌の色を正確に確かめたい洗面では、Ra90以上の高演色タイプが向きます。 Panasonic: LED light color

色温度は、時間帯で変えられると扱いの幅が広がります。日中は白めで活動的に、夜は暖色へ落として休息へ向かう、という切り替えです。夜間に高色温度の光を浴び続けると体内時計(サーカディアンリズム)が乱れやすいため、夕方以降は電球色寄りに調色できる器具が便利です。調光と調色を併せ持つシステムなら、くつろぐ時間は照度と色温度をともに落とし、作業する時間は引き上げる、といった操作も一台で完結します。演色性の低い光のもとでは、肌がくすんで見えたり、ファンデーションの色を読み違えたりする。色温度の話に隠れて忘れられがちですが、見え方の質を左右する要素です。
明るさはアンビエントとタスクに分ける
明るさで迷ったら、空間全体のベースをつくる「アンビエント照明」と、作業面を照らす「タスク照明」を分けて考えると整理しやすくなります。間接照明はやわらかい反射光なので、空間全体を穏やかに満たすアンビエント側に向き、手元の明るさはデスクライトやダウンライトなどのタスク側に任せる、という分担です。この分け方の利点は、生活の場面ごとに必要な光だけを足し引きできること。くつろぐ時間はアンビエントだけにし、手元を使う時間はタスクを重ねる。回路やスイッチを分けておくと、この切り替えが日々の操作で完結します。全体の明るさの目安は、一般住宅で1畳あたりおよそ300〜400ルーメンが一つの基準。ただし間接照明は反射のぶん効率が落ちるため、主役にするなら反射面を明るい色にするか、器具のルーメン数を多めに見ておきます。
もう一つの勘どころが、明暗差の管理です。机上で750ルクスほどを確保しても、周りの天井や壁が暗すぎると輝度の対比が大きくなり、瞳孔の調整が増えて目が疲れます。天井面でおよそ100ルクス、壁面でおよそ200ルクスを残し、作業領域内の照度のむら(均斉度)は0.6以上を目安にすると、対比がやわらぎます。数値を扱うときは、目的の違う基準を混同しないことも大切です。JISの住宅用途で示される推奨照度は、その行為を快適にこなすための目安。一方、建築基準法でいう床面50ルクスは、採光に関わる法的な下限で、快適さの推奨値とは目的が異なります。いずれの数値も出発点として使い、部屋の反射率や天井高に合わせて加減してください。 Panasonic: residential lighting (JIS Z 9125:2023 extract)
照らす面の反射率と仕上げで体感が変わる
三つの物差しのなかで、最も見落とされやすいのが「照らす面」です。同じ器具・同じルーメンでも、光を当てる面が変わると体感はまるで違ってきます。理由は単純で、間接照明で目に届くのは器具の光そのものではなく、面で反射した光だから。天井に当てれば空間は高く広く感じられ、壁を舐めるように照らせば水平方向の奥行きが出て、什器の裏に仕込めば家具が宙に浮いたように軽く見えます。間接照明には、天井へ反射させるコーブ照明、壁面へ反射させるコーニス照明、その両方へ放つバランス照明という名称があります。どの面を光らせるかが、そのまま空間の見え方を決める要素です。

面の仕上げも効く要素です。光をむらなく返すマット(つや消し)の面は、光源を溶かしてやわらかい明るさをつくる。一方、光沢のあるクロスや鏡面のタイルは、器具そのものを鏡のように映し込み、演出を壊してしまいます。濃い色の壁は光を吸収するぶん、同じ器具でも返ってくる明るさが落ちて、空間は沈みがち。だから部屋を選ぶときは、器具のスペックだけでなく、その部屋の壁や天井がどんな色と質感かを先に見ておくと外しにくくなります。明るくマットな面が多い部屋ほど、間接照明は素直に効くのです。照らす面の色と質感は、器具を買い替えるより手早く、しかも効きめの大きい調整点といえます。
面の操作は、建築化照明の構造とも結びついています。天井を照らすコーブ照明は、幕板から壁まで150ミリ程度の離隔があると光が伸び、近すぎると当たった部分だけ強く光るホットスポットが出る構造です。壁を照らすコーニス照明は、光源から壁まで30〜50センチが目安。平滑なクロスを浅い角度で照らすと下地のわずかな歪みが影で浮くため、凹凸のある立体的な素材と相性がよくなります。上下の両方へ放つバランス照明は、空間の高さと奥行きを同時に出せますが、目線の高さに置くなら、直接光が目に入らないよう遮光の角度を詰める必要があります。どの手法も、光そのものより、光を受ける面と造作の寸法で仕上がりが決まるのです。
◆Research Desk のワンポイント
部屋選びに迷ったら、その部屋で一番長くとる姿勢を思い浮かべてください。ソファに沈むのか、机に向かうのか、鏡の前に立つのか。視線の高さと向きが決まれば、光源を隠す位置と、光を返させる面はおのずと絞り込めます。器具のカタログから入るより、ずっと外しにくくなりますよ。
部屋別の早見比較
ここまでの判断軸を、主要な部屋ごとに一覧にまとめます。数値はいずれも一般的な目安で、JISの住宅用途における推奨照度を下敷きにしたもの。部屋の広さ・天井高・内装の反射率で体感は変わります。詳しい設計は各部屋の記事へ進んでください。

| 部屋 | 主目的 | 推奨色温度 | 明るさの目安 | 効く配置 | よくある失敗 |
|---|---|---|---|---|---|
| リビング | くつろぎ+多目的 | 2700〜3000K(作業時は温白色) | 1畳300〜400lm+補助光 | 折り上げ天井のコーブ+テレビ裏・足元の多灯 | 間接のみで照度不足 |
| ダイニング | 食事 | 電球〜温白色・Ra90以上 | 食卓面を主役に | 低めのペンダント+壁のコーニス | 青白い光で料理が不味く見える |
| キッチン | 調理(手元) | 手元は昼白色5000K前後 | 手元300lx目安 | 吊戸棚下のライン+カウンター下 | くつろぎ色に合わせ手元が暗い |
| 寝室 | 睡眠・回復 | 2700K前後 | 控えめ(170〜230lm程度) | ヘッドボード裏・足元の低い光 | 天井の強い直接光で入眠を妨げる |
| 書斎・デスク | 作業・集中 | 昼白〜昼光色(夜は暖色へ調色) | 手元750lx目安 | モニター裏のバイアス光+手元灯 | 画面・天板への映り込み |
| 子供部屋 | 遊び・学習・睡眠 | 学習は高色温度/就寝は電球色 | 全体は十分に確保 | 全体アンビエント+学習タスク+足元灯 | 暖色のみで照度不足・割れる器具 |
| 洗面 | 身支度 | 昼白色4000〜5000K・Ra90以上 | 顔まわり750〜1000lx | 鏡の左右・鏡裏から顔を均一に | 電球色統一で肌がくすむ |
| トイレ | 用足し・夜間 | 電球色基本 | 便所は控えめ(75lx目安) | 便器から離した配置・壁のコーニス | 真上配置で影/センサーが消える |
| 玄関 | 第一印象・動線 | 電球〜温白色 | 1畳150〜200lm目安 | 下駄箱フロート部・足元の間接 | 単調・段差の暗がり |
| ワンルーム | 広く見せる | 低めの暖色基調 | 低重心で分散 | 遠い奥の角のアップライト | 光を片側に寄せ奥が暗い |
表の数値は、部屋ごとの目的を物理に置き換えると読み解けます。寝室の全体照度が低めなのは、明暗順応を働かせて眠りへ向かわせるためで、JISでも寝室全般はかなり低い水準が目安とされています。化粧や読書をする時間帯だけ、手元に別の光を足す前提です。食卓に高めの照度と高演色が要るのは、料理の色や同席者の顔色を正しく見せるため。青白い光のもとでは食材がくすんで見えてしまいます。キッチンや書斎、洗面の手元が白めで高い照度になっているのは、刃物や文字、肌の細部を正確に視認する作業だからです。とりわけ子供部屋の学習面は高い照度が目安とされ、文字のコントラストを上げて目の負担を抑えます。トイレや廊下が控えめなのは、短時間の利用で、夜間に強い光を浴びて覚醒しないため。玄関は第一印象と動線の安全を兼ねるので、全体は控えめでも、靴を脱ぐ足元はやや高めに置くと安全に動けます。
色温度の列も、目的で読めます。くつろぎや睡眠の部屋が電球色寄りなのは、低い色温度が休息の方向に働くから。手元の作業や身支度が白め寄りなのは、高い色温度のほうが物の輪郭や色を見分けやすいからです。ダイニングや洗面に高演色が並ぶのは、料理や肌という、色そのものを見たい対象があるためです。色温度と明るさは別々の物差しに見えて、どちらも「その部屋で何を見たいか」という一点から導けます。
同じ部屋でも、行為によって必要な明るさには段差をつけます。たとえば居間は、家族で過ごす団らんの時間と本を読む時間とで目安が変わり、読書のほうがしっかりした照度を要するもの。台所と食事室がひと続きのDK・LDKは、全体を控えめに保ちつつ、調理台や食卓だけ手元の光を足す配分が扱いやすくなります。廊下や階段なら、平らな廊下より段差のある階段のほうを明るめにすると安全です。加齢とともに必要な明るさは増えるため、高齢の方が長く過ごす部屋は、全体をやや高めに見ておくと安心できます。明るさは一律にそろえるものではなく、行為ごとに濃淡をつけるもの。そう捉えると、配分の判断が楽になります。
部屋を問わず共通する失敗
部屋が違っても、間接照明の失敗は同じ場所で起きます。症状の裏にある物理の根本原因を押さえておけば、部屋をまたいで予防しやすくなるのです。

光源の見切れ:視線が変わるとグレアになる
間接照明の第一条件は、発光部を視界に入れないことです。やっかいなのは、視線が一定ではない点。立っているときは隠れていた光源も、ソファに沈み、ベッドに寝転がり、階段を降りる動きで角度が変われば、不意に見切れてまぶしくなります。さらに、光源を壁に近づけすぎると、当たった部分だけが強く光るホットスポット(光の粒)が生まれ、ハイライトが飛んで均一なグラデーションが崩れます。コーニス照明では光源から壁まで30〜50センチ、コーブ照明では幕板から壁まで150ミリ程度の離隔を取るのが、一つの目安です。座る・寝る・昇り降りといった姿勢を先に想定し、幕板の高さと奥行きを詰めておきましょう。それでも見切れる心配が残るなら、透明カバーではなく、光の粒を散らす乳白カバー付きの器具を選ぶ手があります。あわせて、露出した電源コードは巾木に沿って配線モールで隠すと、景観が締まる納まりです。
明暗差:瞳孔の調整と明暗順応で目が疲れる
画面や手元だけが明るく周囲が暗いと、視線を動かすたびに瞳孔が開いたり縮んだりを繰り返し、目が疲れやすい状態です。明暗順応が頻繁に切り替わるため。対策は、天井面や壁面にも適度な明るさを残し、いちばん明るい面とそうでない面の差を縮めること。手元で高い照度を取るときほど、天井や壁にもある程度の明るさを残して輝度の対比をやわらげます。テレビやモニターの背面を照らすバイアス光が長時間の負担を減らすのも、画面と壁の明暗差を縮める同じ理屈です。一点だけを強く照らすより、複数の面をほどよく光らせて明るさの段差をなだらかにするほうが、目への負担は軽くなります。
反射面の映り込み:鏡面と拡散面の違い
照らす面の素材は、仕上がりを根本から左右します。光沢のあるクロスや鏡面のタイルは、光を入射した向きのまま跳ね返す鏡面反射を起こし、器具がくっきり映り込んで演出が破綻する。対して、つや消しのマット面は光を全方向へ拡散させ、面そのものをやわらかく光らせます。だから、光を当てる面と、光源を隠す造作の内側は、つや消し仕上げが基本です。濃すぎる色の壁は光を吸収して暗く沈むため、基調は明るい色に。なお、平滑な壁を浅い角度で強く照らすと、下地のわずかな歪みや継ぎ目が陰影で強調され、かえって目立ちます。凹凸のある素材を選び、陰影そのものを見せるほうが破綻しにくくなります。
光のむらも、面と造作の取り合いで生まれる現象です。二つの壁が内向きに接する入隅にコーニス照明を回すと、壁どうしの反射光が干渉して、角にV字の光の線が出ることも。器具を壁から離したりルーバーを足したりしても完全には消えにくく、造作の中でいったん光を拡散させてから当てるなど、配光の工夫が要ります。テープ状の光源を並べるときは、器具と器具のあいだに隙間を空けると、そこだけ暗い点(ダークスポット)になってグラデーションが途切れます。端から端まで連続させ、梁やエアコンが光の伸びを遮らないよう、間取りと一緒に計画しておくのが安全です。
見落とされやすいのが、造り込んだ後の掃除と交換のしやすさです。光源を隠そうと造作を狭くしすぎると、後から器具や電源ユニットの交換に手が入らなくなります。上向きに開いた幕板の内側はホコリや虫がたまりやすく、ノズルが届かないと数年で不衛生になりがち。開口は大人の拳が入る程度(おおむね80ミリ以上)を確保し、遮光板はビスで留めて必要なときに外せるようにしておくと、長く使えます。
費用・施工・電気に関わる部分は、物件の構造や契約、地域の決まりで条件が変わります。電源の直結や増設、壁の中を通す配線は電気工事士の領域です。読者自身でできるのは、コンセント式の器具を置く・貼る・配線を整える範囲までと考え、健康や安全に関わる判断も含めて、迷う部分は専門家に相談してください。
部屋別の間接照明でよくある質問
どの部屋から間接照明を始めるのがいいですか?
効果を感じやすいのは、くつろぎ時間の長いリビングと、第一印象を決める玄関です。どちらも壁や天井を照らすだけで空気が変わります。まずは置き型のテープライトやスタンドで試し、手応えをつかんでから造作を検討する流れが、失敗を抑えやすい進め方です。
家じゅうの色温度はそろえるべきですか?
ひと続きに見渡せる空間は、ベースの色温度をそろえるとちぐはぐになりません。一方で、くつろぐ部屋と作業する部屋は目的が違うため、無理にそろえる必要はありません。リビングは電球色、洗面やキッチンの手元は白めへ、と部屋の役割で分けるのが現実的です。
賃貸でも部屋別に間接照明はできますか?
工事を伴わない後付けで十分に可能です。壁にマスキングテープを貼ってからテープライトを固定すれば、原状回復に配慮できます。家具や家電の裏に仕込む、突っ張り式のダクトレールでスポットを足す、といった方法なら、壁を傷つけずに部屋ごとの光をつくれます。
間接照明だけで生活できますか?
くつろぐ時間なら間接照明だけでも成立しますが、調理や読書、メイクのように手元を見る場面では明るさが足りません。間接照明はアンビエント、手元はタスクと役割を分け、調光で時間帯ごとに切り替えるのが安全です。生活の明るさを間接照明で確保するなら、器具のルーメン数は多めに見ておきましょう。
まとめ
部屋別の間接照明は、明るさの量から考えると迷子になります。暗い・狭い・眩しいという症状を、受光面の輝度不足、天井や壁上部の暗さ、光源の見切れと明暗差という物理の原因に翻訳することが出発点です。そのうえで、明暗順応を使って沈めるのか、反射率と壁面輝度で広げるのか、視線誘導とグレア制御で効かせるのか、部屋の目的に合うアプローチを選びます。この三択は排他ではありません。リビングのように多目的な空間では、広げる土台の上に、くつろぐ時間だけ沈める層を重ねる、といった組み合わせも現実的です。大切なのは、どれか一つに決めつけないことです。
具体化は、色温度・明るさ・照らす面の三つの物差しで進めます。とりわけ照らす面の反射率と仕上げは見落とされがちですが、同じ器具でも体感を大きく動かす要素です。そして部屋が違っても、光源の見切れ、明暗差、反射面の映り込みという失敗は共通して起きます。隠す造作と照らす面の素材を先に詰めておくことが、長く美しく機能させる近道になります。各部屋の具体的な寸法や器具選びは、ここから先のそれぞれの記事で確かめてください。
間接照明を部屋ごとに突き詰めると、最後は「一つの部屋を一つの照明でまかなう」という前提そのものに行き当たります。ためしに、あかりを「手元を照らす光」と「空間全体を満たす光」に分けて配ってみてください。同じ器具でも、部屋の見え方は変わってきます。その考え方は、一室一灯を手放す照明設計の記事で掘り下げています。
