自邸で、玄関からリビングへ入るまでの空間を考えるとき、最初に決めたのは「玄関をどう見せるか」ではありません。最も印象に残したい場面をどこに置くかです。
その答えが、リビングのメディアウォールでした。壁面を前へせり出させ、その背後に光を入れたメディアウォールを、この動線の中で最も強い場面に置く。そのためには、玄関、東側ホール、ヌック、中庭、リビング入口までを、それぞれ単独で目立たせるだけでは成立しません。
自邸には、玄関、中庭、間接照明、ガラスドアと、印象の強い要素が続きます。その間に置いた石塊をイメージした造作壁を、モノリスと名付けた。
それらをすべて同じ強さで見せれば、家の中を移動しても視線の置き場所が変わらず、どこが最も重要なのか分からなくなります。
そこで東側ホールでは、何を置くかだけでなく、玄関から何が見えるのか、数歩進んだとき何が追加されるのか、まだ見せないものは何か、境界の向こうからどこまで次の空間を見せるのかまで分けて考えました。
完成した空間だけを見れば、モノリス、ヌック、中庭、ブロンズガラスのドア、光を受ける壁が並んでいます。しかし、それぞれを別々の見せ場としてつくったわけではありません。リビングのメディアウォールを最後まで残すために、見せる順番と強さを調整した結果です。
メディアウォールを最も強い場面にするため、玄関から逆算した
家づくりでは、玄関は最初に目に入る場所なので、そこで強い印象をつくりたくなります。実際、自邸でも玄関の床から壁へ斜めに横断するライン照明を検討していました。
単体で見れば魅力のある案です。直線的な建築の中に斜めの光が入れば、玄関へ入った直後に視線を止める力があります。だからこそ、採用するかどうかは照明そのものの好みだけでは決められませんでした。
問題は、その数歩先に何があるかです。
玄関を抜けると東側ホールがあり、そこにはモノリスとヌック、中庭があります。その先にはブロンズガラスのドアがあり、さらに奥には最も強く見せたいメディアウォールがあります。玄関で斜めのライン照明を使えば、動線の最初からかなり強い視覚イベントです。
その後もモノリス、中庭、ガラスドア、メディアウォールと強い要素が続けば、一つずつは成立していても、移動全体ではハイライトが連続します。最も記憶に残したい場所をつくるつもりが、すべての場所を同じように目立たせることになります。
そこで斜めのライン照明は採用しませんでした。
これは玄関を弱くしたかったからではありません。玄関にも十分な素材や照明計画があります。そのうえで、床と壁を一つの強い線が横断する演出まで与える必要があるかを考えました。
家の中に複数のフォーカルポイントを設ける場合、重要なのは「それぞれをどう目立たせるか」だけではありません。どれを一番強くするのか、その前に同じ種類の強い演出を置かないことも設計です。
図面やパースでは、一室ずつ切り離さず、実際に歩く順番で見ることが判断の軸になります。玄関パースだけなら演出を足した案の方が魅力的に見えても、玄関の次、その次、その先まで並べて強い照明や造作壁が何回続くかを確かめると、別の問題が見えてきます。
自邸では、玄関を完成地点ではなく、リビングまでの最初の場面として扱いました。そこから東側ホールで視線の範囲を変えながら、メディアウォールまでハイライトを持ち越しています。
不採用にしたのは、照明の量ではなくハイライトの重複です。
特に注意したのは、玄関のライン照明とメディアウォールが、どちらも建築面と光を組み合わせた強い視覚演出になることでした。場所が違っても刺激の種類が近ければ、先に見た演出が後の演出を先取りします。
この判断は、照明以外の素材や造作にも使えます。大判材、造作壁、印象的な照明などを実際に歩く順番へ並べ、「これ自体は好きだが、この位置には必要ない」と判断できるか。採用するものと同じくらい、魅力的でも採用しないものを決める必要があります。

ヌックのために広げたホールを、モノリスでもう一度絞る
東側ホールは、西側のホールより広く取っています。これは廊下に余った幅があり、そこへ後からヌックを置いたわけではありません。
最初からヌックを設けるために必要な幅を確保し、その分を家全体の横幅から調整しています。
通過するだけの廊下なら、ここまでの幅は必要ありません。しかし、東側ホールには、人が歩く場所とは別に、ベンチへ腰掛ける場所、本を手に取る場所、人が一時的に立ち止まる場所が必要でした。通路幅を決めてから余った部分へベンチを押し込むのではなく、ヌックを成立させることを先に考え、そのためにホール自体を広げています。
ただし、物理的に広くすることと、玄関から広く見せることは別です。
ここが、東側ホールで特に重視した部分です。
ヌックのために確保した幅を、そのまま玄関側から全部見せればどうなるか。玄関に立った段階で、ベンチ、中庭、その先のリビング方向まで複数の情報が同時に視界へ入りやすくなります。
すると、せっかく玄関からリビングまで距離があっても、見る順番がなくなります。まだホールへ入っていない段階で、この先にある要素を一度に把握できてしまうからです。
そこで、物理的には広く確保した東側ホールを、視覚的には一度絞ることにしました。その役割を持たせたのがモノリスです。
モノリスは、一枚岩や巨石をイメージした塊として考えています。薄い袖壁を立てて通路を区切るのではなく、そこに厚みと量感のある一つの塊が置かれているように見せる構成です。
配置にも理由があるのです。モノリスはベンチの端を隠し、ヌックの輪郭をつくっています。さらに、ベンチの先端と同じ位置で止めず、ベンチよりも手前へ張り出させています。
この張り出しによって、玄関側から見たときにヌック全体が最初から露出しません。モノリスの横を通り、視点の位置が変わって初めて、ベンチの広がりと中庭との関係が見えるのです。

つまり、自邸では「ヌックをつくるために幅を広げる」と「その広さを玄関から全部見せない」を同時に行っています。
一見すると矛盾する操作ですが、目的が異なります。物理的な幅は、人が座り、歩き、立ち止まれるようにするために必要です。一方、視覚的な幅は、どこから何を見せるかを決めるために調整しています。
広い廊下を計画すると、「せっかく広げたのだから、広く見せた方がよい」と考えがちです。しかし、見せたいものが複数続く住宅では、最初からすべて見えることが必ずしも有利とは限りません。
図面を確認するときは、廊下の幅だけを見るのではなく、玄関に立った視点から線を伸ばしてみると判断しやすくなります。ベンチ、中庭窓、次室の入口、さらに奥の造作まで、一つの視野へ同時に入っていないかを見るためです。
東側ホールでは、モノリスによって視界を一度制限し、その先で情報を増やしています。物理的な空間寸法と、視覚として認識させる範囲を分けて考えた結果です。
モノリスには光も組み込んでいます。ただし、壁面全体を光らせて別の主役にする意図ではありません。一枚岩の塊から光が漏れるような扱いにし、視覚情報を増やしすぎずに次の場所へ意識をつなぐためのものです。
昼間の写真で確認できるのは、モノリスがベンチ端を隠し、ベンチより手前へ出ている位置関係です。夜の漏れ光の強さまで、昼間写真だけで判断してはいません。

中庭窓は窓種ではなく、中央に残る線から指定する
モノリスを越えると、中庭が横方向に見えてきます。
ここで先に考えていたのは窓の種類ではなく、中庭をどのような面として見たいかでした。求めていたのは、正面から見たときに中央へ立つ縦框や方立などの部材で分断されない、連続した一枚の窓面です。固定窓は、その完成像を実現するための手段として選んでいました。
発注前の打合せには、固定窓を指定したパースを持参し、施工会社もその場でコピーを取っています。それでも、事前の変更確認がないまま、実際には二枚の引き違い窓が施工されました。中央には現在も建具の線が残っています。
窓が付いたあとに指摘すると、施工者からは「固定窓へ変えても中央線は残る」と説明されました。しかし、私が求めていたのは引き違い窓を同じ分割の固定窓へ交換することではありません。規格品で成立しないなら特注でもよいので、中央線そのものがない窓面にしたかったのです。
中央に方立を設けない固定窓が成立しない条件があったのなら、発注前に制約と代案を確認すべきでした。固定窓の指定から引き違い窓へ変更する場合も、施工前の確認が必要です。その二つが行われなかったことと、私が今回の経験から得た伝え方の改善は分けて考えています。
最終的には施工段階でさらに摩擦を増やすことを避け、引き違い窓のまま受け入れました。中央線を許容できると考え直したわけではありません。中庭を一枚の面として見たかったという当初の目標に対して、完成後も視覚上のノイズとして残っています。
今回の経験から得た改善は、固定窓という窓種だけでなく、完成時に照合できる言葉まで残すことです。たとえば、「室内から正面に見たとき、窓中央に縦框や方立のない一枚の連続した窓面とする。外周枠は許容するが中央の縦線は不可。開閉機能は不要。規格品で成立しなければ特注の可否を検討し、分割や窓種を変更する前に承認を取る」と指定します。
どの仕様で実現できるかは、計画条件ごとに異なります。発注前に住宅会社へ確認する必要はありますが、その確認によって、中央線を残さないという完成条件まで自動的に変わるわけではありません。
図面上の長方形だけでは、完成時に見える枠の本数や位置を判断できない場合があります。平面図だけでなく正面から見た立面や建具図を使い、中央の部材が景色のどこを横切るのか、変更時の承認条件まで確認する必要があります。
中庭窓と正面のガラスドアは、同じ「透けるもの」でも役割が違う
中庭窓の先に見せているのは、生活空間の片鱗です。ホールを進む途中で、横方向に中庭やその周囲が視界へ入ります。
一方、進行方向の正面にあるブロンズガラスのドアには、別の役割を持たせました。
自邸は全館空調であり、この扉はホールとリビングの温熱環境を日常的に分けるために設けたものではありません。普段は空気を循環させるため、開放している時間の方が長い扉です。
それでもここに扉を置いた主な理由は、ゲストが玄関からリビングへ進むときに、空間が切り替わる体験をつくるためです。対外的な動線に、次に入る場所を予告し、一度止め、扉が開いたあとに通すという順番を加えました。
閉じたドアの手前では、身体はまだリビングへ入れません。しかし、視線の一部はブロンズガラスを通ります。
そこでメディアウォールの存在を完全に隠すのではなく、片鱗だけを見せています。形や存在の一部が分かる程度にとどめ、全体はドアを越えたあとに見せる構成です。
ゲストはガラス越しに次の空間を予告されながら、扉の手前で一度立ち止まります。扉が開いた瞬間、視界と身体の進行が同時に広がる構成です。自分で扉を開ける場合には、見るだけだった空間へ自ら境界を越える動作も加わります。この「見る、止まる、開く、越える」という順番によって、リビングへ到達するまでの高揚感をさらに強めることを狙いました。
これは透明なドアで境界をなくす設計ではありません。視線だけを先に通し、身体は止めます。境界を一度認識させたあと、扉の開閉によって次の空間へ接続する考え方です。
中庭窓とブロンズガラスドアは、どちらも向こう側を見せる部材ですが、見せている情報は異なります。
中庭窓は、移動の途中で生活空間の片鱗を横から見せるものです。正面のドアは、次に身体が入る主場面を予告します。
この二つを同じ「ガラスで視線を通す」という操作として考えると、役割の違いが消えてしまいます。重要なのは透明度そのものより、どこから、何を、どの段階で見せるかです。
建具を検討するときも、「ガラスドアにするか、木製ドアにするか」だけでなく、その境界で身体、視線、光、音のうち何を止めたいのかを分けて考えると判断しやすくなります。
日常は開放し、来客時にはトランジションをつくる
この扉は、常に同じ状態で同じ役割を担うものではありません。日常は開放して空気と動線をつなぎ、来客時に閉じていれば、視線を先に通しながら身体を一度止める境界として働きます。
また、ホール側の窓から入る西日の熱を強く感じる真夏などは、視覚的な連続より快適さを優先して扉を閉めています。これは演出のためではなく、完成後の実際の使い方です。
開放時には「止まって開く」という体験は生まれません。したがって、来客時の演出として成立させるには、迎える前に扉を閉じておく必要があります。普段は開放し、来客時には閉じてトランジションをつくる。用途の異なる二つの運用です。

ウォールウォッシャーを決めるだけでは、一枚の壁にはならない
東側ホールの反対側には、平面上でL字につながる壁があります。この壁は、ウォールウォッシャーによって光を受ける一枚の面として扱うことを考えました。
ここで最初にあるのは、「どの建具を採用するか」ではありません。「この壁をどのような面として見せたいか」という要求です。
ウォールウォッシャーを設けても、壁が自動的に一枚の面として読まれるわけではありません。
光が壁をなでるように入ると、壁面の凹凸や出入りは影として現れます。建具の枠、扉面の引っ込み、設備、壁の段差などがあれば、それぞれの輪郭が通常より認識されやすくなります。
つまり、照明計画と壁面計画は別々には考えられません。
自邸では、このL字の壁に子供部屋の扉があります。
ホール側から見たときに扉が壁面より凹んでいれば、その位置で面が切れ、光が当たったときに影と輪郭が出ます。こちらがつくりたかったのは「ドアを見せる壁」ではなく、できるだけ一枚の面として光を受ける壁です。
そこで、ホール側の扉面を壁とそろえやすいKAMIYA F/Sを採用しました。
この順番が重要です。
F/Sを使いたかったから壁面を面一にしたのではありません。光を受ける壁を一枚の面として扱いたい、という要求です。その壁に扉がある状態です。通常の見え方では扉部分の凹凸が強く出ます。そこで、その問題を抑える手段としてF/Sを選びました。
建具を選ぶとき、カタログでは扉そのものの色、素材、ハンドル、枠の形が目に入ります。しかし、実際の空間では扉だけが見えているわけではありません。
特に照明を壁面へ当てる場合は、扉が閉じているときに壁とどの位置関係になるのか、枠がどれだけ線として残るのか、壁面に段差ができるのかを確認する必要があります。
設備についても同じです。スイッチやコンセント、点検口などを含め、そこに何が載るのかによって壁面の情報量は変わります。
すべてを消す必要があるわけではありません。重要なのは、その壁に何を担わせたいかを先に決めることです。
建具を見せる壁なら、扉や枠の存在を積極的に使うこともできます。一方、自邸のこの壁は、モノリス、ヌック、中庭、正面のガラスドアと情報が続く反対側にあります。
そのため、新しいフォーカルポイントを追加するのではなく、視線を休ませながら左側の演出を支える、視覚情報を抑えた「支持面」として残す方を選びました。
図面を見るときは、ドア記号だけを確認するのではなく、正面から見た立面を想像すると判断しやすくなります。扉が壁面からどちらへ下がるのか、枠の線がどこに出るのか、隣接する壁と面がそろうのか。そのうえで照明がどの方向から当たるかを見ると、平面図だけでは分かりにくい凹凸が見えてきます。
この東側ホールで重要なのは、製品名ではなく、「光を受ける一枚の壁」という要求から建具の見え方を決めたことです。

完成後のヌックで分かった、一つの寸法が複数の条件を決めること
ヌックは、計画時から将来子供たちが本を読む場所として使うことを想定していました。同時に、子供専用の場所ではなく、大人も腰掛けられる居場所として考えていました。
現在は、家族で絵本を選ぶ場所になり、季節のものや植物を置くこともあります。通路の途中につくった場所ですが、見せるためだけのベンチではなく、実際に立ち止まって使う場所として使われています。
一方、使い始めてから分かった制約も出ました。
ベンチ高と、その下に設けた収納の内高は、同時に決めた寸法です。
完成後には、一部の大判絵本が収納に収まらないと分かりました。
数字だけを見ると、「収納部分をもう少し高くすればよかった」という考えが浮かびます。しかし、ヌックでは収納だけを独立して大きくすることはできません。
ベンチ下の収納高さを増やす方法の一つは、ベンチ自体を高くすることです。ただし、そうすれば座面の位置にも影響が出ます。同時に、廊下から見たベンチの塊の高さや、モノリスとの比率も検討対象です。
逆に、現在のベンチ高さや見え方を維持しようとすれば、内部収納には高さの上限があります。
つまり、一つの寸法が「座る」「収納する」「外から見る」という三つの条件に関係しています。
当時の寸法をどう優先したかは記録に残っていません。完成後に確認できるのは、ベンチ下の収納には一部の大判本が入らないという事実です。
このような造作を計画するとき、収納量だけを確認すると判断を誤りやすくなります。
たとえば「絵本を入れたい」と伝えるだけでは、何冊入るかという容量の話になりやすいですが、実際には最も背の高い本が何mmあるのかを見る必要があります。その一方で、その高さを確保するために座面を上げた場合、腰掛ける場所としてどう変わるかも確認しなければなりません。
造作家具では、収納寸法と家具の外形が同時に変わります。収納だけ、座りやすさだけ、見た目だけを別々に最適化できるとは限りません。
ヌックの場合はさらに、ホールを進んだときにどう見えるかも関係する部分です。モノリスでベンチ端を隠し、その先で座面を見せる構成なので、ベンチの高さや厚みを変更すれば、視覚的な比率も変わります。
そのため、造作を決めるときは「収納はどれくらい欲しいか」だけではなく、「何を入れるか」「どの高さで座るか」「廊下からどの程度の塊として見えるか」を同時に確認することが必要です。
ヌックは、計画した通り家族が使う場所になっています。ただし、大判本が収まらないことも含めて現在の状態です。完成後の評価では、意図通りだった部分と、使って初めて分かった制約を分けて見ています。
DESIGN CHECK
自分の図面へ持ち帰る4つの判断
自邸の部材をなぞるためではなく、図面・パース・打合せで何を確認するかを整理する問いです。
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PEAK|最も記憶に残したい場面はどこか
まず、家の中で最も強く記憶に残したい場所を一つ決めます。玄関、中庭、階段、ダイニング、リビングの造作壁など、候補はいくつあっても構いません。そのうえで、その場所へ到達する前に同じ種類の強い演出を置いていないかが、次の確認項目です。
図面やパースを見るときは、一枚ずつ評価するのではなく、実際に歩く順番へ並べてください。間接照明、大判材、造作壁、強いアクセントが何度も連続しているなら、それぞれの完成度ではなく、どこを一段引くかを検討します。
確認する問い:最も記憶に残したい場面の前に、それと競う強い演出を置いていないか。
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REVEAL|玄関に立った時点で、何が同時に見えるか
広い空間をつくったからといって、その広さを入口から全部見せる必要はありません。
平面図を見るときは、玄関位置に自分が立ったつもりになり、そこから視線を伸ばしてください。最初の視野に、ベンチ、窓、庭、造作壁、リビング入口などが何個入るのかを確認します。
「見えるものが多いほど広く感じる」という考えだけで決めず、今見せるものと、数歩進んでから見せるものを分けられないかを考えます。
確認する問い:玄関から最初の視野に何が同時に入り、そのすべてを最初から見せる必要があるか。
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THRESHOLD|境界で、何を止めて何を通すか
ドアや窓を選ぶとき、「透明か不透明か」「開き戸か引き戸か」だけでは、境界の役割を十分に整理できません。
そこで、身体の移動、視線、光、音を分けて考えます。
住宅会社との打合せでは、商品名だけを指定するより、「この境界で何を見せたいか」「完成後の視界に何を残したくないか」まで共有した方が、目的を伝えやすくなります。
確認する問い:この境界では何を止め、何を通し、どの場面でその役割を発揮させたいか。
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SUPPORT|主役ではない面に、どれだけ情報を残すか
すべての壁や建具を見せ場にする必要はありません。強い場面の反対側には、視線を休ませるための支持面が必要になることがあります。
図面や立面を見るときは、主役だけでなく、その反対側も確認してください。建具枠、扉の段差、スイッチ、設備、収納扉などが並び、意図せず情報量の多い壁になっていないかを見る必要があります。
確認する問い:主役の反対側にある壁、建具、設備を、どこまで情報を抑えた支持面にするか。
家づくりで難しいのは、良い製品や魅力的な演出を見つけることだけではありません。それらを、どの位置に、どの順番で、どの強さで使うかを決めることです。
その順番には、どこから何が見えるかだけでなく、身体がどこで止まり、何を開き、どの境界を越えて次の空間へ入るかも含まれます。また、同じ建具でも、来客時の演出と日常の使い方では担う役割が変わります。
これらは、モノリスやガラスドアを使えば再現できる構成ではありません。図面の中で「何を置くか」だけを見るのではなく、「何をまだ見せないか」「完成後に何本の線が残るか」「どこで身体の進行を止めるか」「どの面は主役にしないか」を要求として言葉にする必要があります。
玄関からリビングまでを一続きで見れば、一室ずつ見ていたときには気づかなかった競合や、歩くことで生まれる切り替わりが見えてきます。自邸の東側ホールは、視線と身体に渡す情報を段階的に変え、最終的なメディアウォールまで高揚感を持ち越すために組み立てた場所です。
